かとっぽ

    畠から掘り出された仏像      Home

 明治の初め頃のことですが、ある日、冷水の人が畑を開墾してい

たら何か人形のようなものが土の中から出てきました。はて何だろ

うかと土を払い落して見ると仏像らしいのです。冷水はカトリック

信者の部落なので仏像のことは解りません。そこで神父さんの許に

持参して見てもらいましたところ、それはお釈迦さまの仏像である

ことが解りました。拾い主はカトリック信者ではあるがお釈迦さま

の話を神父さんに聞いたので大切に保存していました。 ところが

ある日この人に金を貸していた貸し主が金の請求にやっ

てきて室内の仏像を見つけ、「これは何か、どこから来

たのか。」と尋ねるので、包みかくすことなく発見したいきさつを

詳細に語りました。それを問いていた貸し主は腹の中で、これはい

いものを見つけたぞと喜んだに違いありません。「お前はカトリッ

クの信者だから、この仏像は不用だろう、これは俺が貰って行くぞ

。」と言うので、「おっしやるとおり私はカトリック信者ですが、

この仏像は世界三聖人のお釈迦さまと聞きました。私の手で堀り出

されたのも何かの縁、大切にしたいのでお渡しする訳にはまいりま

せん。」と断りましたが、「それでは借金を残らず返済するか、そ

れが出来なければ借金のかたに俺が貰って行く。」と無理やり仏像

を持って行ってしまいました。貸し主はその後この仏像をきれいに

しようと金メッキしてもらいました。 金メッキされた仏像は一見

立派になったので、「いいものを手に入れた。」と内心ホ

クホクして人々に自慢していたのですが、ある時仏像にと

ても詳しい人が訪れて、「あなたは立派な仏像をもってお

られるそうですが、私にも是非見せて下さらんか。」と言

うので、てっきり賞讃されると思い「私が手に入れた時は

薄汚くて見られたものではなかったが、ご覧下さい、金メッキして

こんなに見ちがえる程になりました。」と誇らしげに見て貰ったと

ころが、「これは惜しいことをしたものだ。折角いい仏像を金メッ

キしたために値打ちを下げてしまいました。」と言って嘆かれたそ

うです。さすがの貸し主も、「折角金をかけてメッキしたことが仇

になってしまったことは、金力にものをいわせて無理に自分の物に

した報いである。」と嘆いたということです。

                         

                        上五島町郷土史より