かとっぽ
おじゅうの山芋 Home
昔、太田に正直で働き者の夫婦がいた。 二人は仲もよく、何不
自由なく暮らしていたが、ただ子供が出来ないので寂しい思いをし
ていた。 ある日、夫は山へ仕事に出かけた。ひと仕事すんだので、
「ひとっとこの辺でひと休みすうかな。」と、大きな木の根元に腰
を下ろして休んでいる内に、何時の間にか眠ってしまった。 昔、
太田に正直で働き者の夫婦がいた。 二人は仲もよく、
何不自由なく暮らしていたが、ただ子供が出来ないの
で寂しい思いをしていた。ある日、夫は山へ仕事に出
かけた。ひと仕事すんだので、「ひとっとこの辺でひ
と休みすうかな。」と、大きな木の根元に腰を下ろし
て休んでいる内に、何時の間にか眠ってしまった。
すると、夢の
中で山の神が現れて、「お前たちにも、初めての子供が生まれるぞ。
来年の三月三日に必ず女の子が生まれる。しかし残念なことじやが、
その子の命は七つの歳の三月三日までじや。」と言って、消えてい
った。夫は、はっと日をさまし、「ああ、こん夢ん本当じやればよ
かなあ。そっでも七つまでの命ち言うたな。かわいそか‥…。」と
複雑な思いをしていた。 そして月日がたち、次の年の三月三日に
突然妻が「腹ん痛か、痛かよー。」と言ったかと言う間もなく、可
愛いい女の子が産まれた。二人は初めての子を授かって大喜びした。
でも、夢のお告げどうりだと、七つの歳の三月三日までの命。まさ
かそんな事はないと思っても、心配で心配でたまらなかった。
月日がたつのは早いもので、その子も七つの誕生日を迎えた。両
親は、お告げ通りだと、この子が可愛いそうで、夢が嘘であってく
れればと思っていた。「せめて三月三日の節句にゃざあまなごっつ
ばして、親子三人楽しく遊ぼう。」 そこで、重箱にイセエビ,ア
ワビ、山芋、人参、里芋など、海の辛、山
の手を一杯つめて、磯辺にやってきた。
ご馳走を食べたり、遊んだりしている内に、
やがて昼すぎになった。「どうやら夢や嘘じ
ゃったばい。もう何もなかさ」と、胸をなで
おろした時だった。今まで波一つなかった海がにわかに荒れ始め、波
の中から大きな鮫が現れて、子供めがけて襲いかかった。子供はびっ
くりして動くことも出来ない。夫婦は、これが神のお告げであったか
と思ったが、そばの重箱から山芋をとって夢中で鮫めがけて投げつけ
た。 鮫ほ山芋をパクリパクリと食べていたが、やがて口の中がぬる
ぬるになった。夫婦はこのすきに子供を抱き上げ、急いで逃げ帰った。
その後、子供ほ元気に育ち、他の人よりも長生きしたという。 それ
で太田では、今でも節句の重箱には必ず山芋を入れているという。