かとっぽ

    大豆がとれない            Home

 昔、太田に一人のお坊さんがやってきた。そのお坊さんは諸国を

廻ってきて、今度は江ノ島に行こうと思っていた。その頃、太田は

大豆のとり入れでてんてこまいの忙しい最中だった。お坊さんは村

の人に、「忙しいところ申し訳ありませんが、私を江ノ島まで船で

渡してもらえないか」と頼んだ。すると、「おお−こん忙しか時に、

江ノ島まで行かるっもんかな。 ほかん人に頼まんかな。」と断わ

られてしまった。ほかの人に 頼みにいっても断わられ、

誰一人として相手にしてくれる人が 居なかった。 

お坊さんは仕方なく何処ともなく歩き出して行ったという。 それ

からというものは、この村では大豆のさやは出来ても実がならなく

なったという。「どがんして大豆んとれんごてなったっじやろか?

そう言えば、あん坊さんの来た時からばい。私どんがうてあわんじ

ゃつたけん、ばっの当ったっばい」と言い合った。 実はこのお坊

さんほ弘法大師で、付人の冷たい態度を快く思わなかったに違いな

いと云われている。

                         有川町郷土誌より