かとっぽ

   醤油の売れる方向         Home

 昔、七目に大きな醤油屋があった。その店には、太郎と次郎とい

う二人の若者が雇われていて、太郎は毎日有川に、次郎は青方に醤

油を売りに行っていた。青方に行く次郎は一日に一荷も二荷も売っ

て帰るが、有川に行く太郎の方は一荷も売れない。太郎は、どがん

しておっが醤油や売れんとかなぁ?、次郎や沢山売ってくっどに…

どがんかしてざあまに売りたかなあ−。」或る日、友達の三平に会

って、「おっや一生懸命に売りっちょつどやばってん、あんまっ売

れん。どがんしたらよかとじやろか。」と相談した。「そっや気の

毒じやあ。あんたや有川、次郎や青方に行っとか。有川や東の方に

なっな。青方や西目になっじやろが。醤油や煮しめは作っ時、ざあ

まに使ぅじやろうが。そっやけん、西目にある青方ん方がよう売れ

るちゅうわけだ。」と三乎は笑って答えてく

れた。太郎も、「なる程なあ。」と頷いたそ

うである。

                          有川町郷土誌より