かとっぽ

     くり姫の親孝行      


 昔、ある所に、おじいさんとお、はあさんが住んでいた。
 ある日のこと、おばあさんが拾ってきた栗をふかして
食べょうとすると、パチッと粟がはじけて、粟の中から美しい女の子
が生まれてきた。
「おじいさん!この子は神様が私どんに授けてくれたっかもしれんで
すね。」と二人は女の子に“くり”と名前をつけ、大事に育てた。
くりは美しく利口で、優しい娘に育ち、村人達ほ、くり姫と呼ぶよう
になった。
 ある時、おじいさんが重い病気にかかってしまった。医者に診ても
らうと、「鴛の卵を飲ませれは良くなる。」というので早速おばあさ
んは、山鴛の卵を手に入れるため、いろんな人達に頼んだが、卵は手
に入らず、がっかりして困ってしまった。
 その様子を見たくり姫は,「おばあさん、私が鴛の卵を見つけて、
きっとおじいさんを元通りにしてみせます。」と言うと、おばあさん
が止めるのも聞かず山の中に入っていった。
 くり姫は三日三晩山の中を歩き回り、そのあげく疲れ果て、手や足
から血がにじんでいる。それでも卵は見つからなかった。
 途方にくれたくり姫が岩の上に腰を下ろすと、そこへ鴛が一羽飛ん
できて近くの木に止った。でも鴛は、下を見てうなずくようにしている。
変に思って下を見ると、木の根元の草むらに卵が転がっていた。
くり姫は、大喜びで拾い上げ、「鴛さん、有難う。」とお礼を言うと、
急いで家に帰り、今にも死にそうだったおじいさんに鴛の卵を飲ませた。
するとおじいさんはたちまち元気になり、それからも三人で幸に暮ら
したという。

            有川町郷土誌より