かとっぽ

     孝行三吉と大蛇 


 昔ある所に三吉という子供がおった三吉は、お母さんをとて
も大事にする親孝行着で、村でも評判の子供だった。
 ある時、お母さんが病気になった。三吉は、朝夕、神様にお
祈りを続けた。親ひとり子ひとりの貧しい生活なので、思うよ
うに薬も買うことが出来ず、三吉は朝早く起きて山で薪をとり、
 それを売ってようやく薬を買い、お母さんに飲ませていた。
 ちょうどその頃、村には一つの恐ろしい行事があった。
それは村の神様のお祭りで、村に住む若い娘を一人づつ生け獣
にする習慣があった。その年の順番ほ、代官様の娘に白羽の矢
が立ったのである。
 「やっと生まれた、みじょしてたまらん一人娘を‥‥‥。
どがんしたらよかじゃろ‥‥‥。」と思案の末に、娘の身代わ
りになってくれる人に三百両出そうという事になった。が、
なかなか身代わりは見つからない。そこで、お金に困っている
三吉をお屋敷に連れこさせ、 「身代わりをやれ!」と責め立
てた。
 三吉は、自分が身代わりになれは、お金が入ってお母さんが
安心して暮らせるだろうと思い、 「あとに残った母さんを頼
みます。」といって身代りになり、樽の中に入った。その樽は、
付人達によって鎮守の森の真っ黒く濁った他の淵まで持って行
かれ、村人達は我先にと逃げ帰ってしまった。

 だんだんと夜も更けて草木も眠る丑三つ時になると、生臭い
風がサァーッと吹いたかと思うと、物凄い音と共に、真っ赤な
舌を出した大蛇が樽めがけて這い迫って釆た。
 三吉はとても恐ろしくなり、 「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀
仏‥‥‥‥」とお祈りするばかりであった。
 するとどうしたことか、急に大蛇が苦しそうに右や左とのた
うち回り、大蛇の吐く血で池の水が真っ赤に染まっていった。
 夜が明けて、付人達が、三吉の骨を拾いに他の所まで来てみ
ると、池の水が真っ赤に染まり、大蛇が死に倒れている。
 樽の中を覗くと、三吉が気絶していた。
 村の人達は、三吉が助かったのは、三吉の親孝行が、神様や
仏様に通じたのだろうと話しあったという。

               有川町郷土誌より