かとっぽ

     わら三本で十両    Home               


 昔、村はずれに、親子三人が貧しいながらも仲良く暮らしていた。

 ある日、お父さんが草履を編むと、わらが三本だけ余った。すると

子供が、「父ちゃん、こん残ったわらはくれんかな。」と言ってその

わらをもらい、それをもってでかけた。 井戸のそばを通り掛かると、

女の人がネギを洗っていて、子供を見ると、「こんネギは縛っとに、

そんわらばくれんね?」と言った。わらを渡すと、ネギを一束もら

った。 ネギをぶらぶらさせながら隣の村に行くと、どこかの結婚

式の準備で村中忙しそうである。通りがかりの女の人が子供のネギ

に目をつけ、「結婚式のご馳走にいっとばってんが、そんネギは別

けてもらわれんやろか。」と言うのでネギを渡すと、お礼に三年味

噌という味噌をくれた。

 今度は味噌を持ってそのまた隣の村に行くと日が暮れたので、あ

る家に泊ることにした。するとその家の主人が、「なんじゃろうま

か匂いのすんなあ。あんたん持っちょっどや何かな?」「はい、三

年味噌という味噌です。」「う−ん、うちでも味噌や造るばってん、

そがんよか匂いにゃならんなあ。そっば譲ってくれんか?」と頼む

ので、子供は味噌を差し出した。すると主人は、お礼にと、一本の

錯びた刀をくれた。 次の日、もらった刀を下げて古いお寺の前を

通りかかると、大きな蛇が美しい女の人を、今にも飲み込もうとし

ていた。子供は持っていた刀を抜いて蛇に切り付け、遂に退治した。

 これを見ていたお寺の和尚さんは、その勇気に感謝して、「よう

やった、ほんなこち、ようやってくれたなあ。お陰で娘も助かった。

 ところでどうじゃろう、そん刀ば十両で売ってくれんか?」と言

います。子供は刀を売りお金を持って家に帰った。するとお父さん

は、「たった三本のわらで、十両にもなったっか!」と言って大変

喜んだということである。

                有川町郷土史より