かとっぽ
誓文石の誓い Home
流れる風光明媚な場所。 その昔、この地に誰も住んでいなかった頃、奈良
尾の人々は製造伝馬でこの地を訪れ、木材等の伐採のために泊まりがけで
働いていlました。 そんな折、奈良尾の庚申山地区に住んでいた江村さん
が、山の管理のために、そこへ移り住むこととなりました。江村さんがカッパ
と出会ったのは、その後のことでした。 川辺の早むらで 「でずもう」 を挑
まれた江村さん、「まともに相撲を取っては勝ち目がない。」 と思い、カッパ
に 「せっかくならば、古式ゆかしき相撲の習慣に乗っ取り土俵入りをしよ
う。」 と提案。元来相撲好きのカッパが断るはずもなく、そんきょの姿勢か
ら一礼すると皿の水がこぼれてし−まいました。
皆さんご存知のとおり、皿の水のなくなったカッパは十分な力を発揮する
ことができません。 結果、その場にいた数匹のカッパたちは、罰として腕を
引き抜かれてしまいました。 (ちなみにカッパの腕は左右つながっており、
一方を引っ張ると、片方も抜けたそうです。)
その夜のこと、これからは平穏な暮らしができると思っていた江村さん宅
に腕を抜かれたカッパがやってきて 「腕を返してくれ!腕を返してくれ〜。
明朝、鶏の一番鳴きまでに腕を入れないと、元の体に戻らなくなる。」 と
家の周りで泣き叫びました。 かわいそうに思った江村さんは、浜辺から大
きな石を運んできて 「これは誓文石だ。おまえたちがこれから人様に悪さ
をしないとこの誓文石に誓うならば、腕を返してやろう。」 と言って、カッ
パたちもこれを承諾。無事元の姿に戻りました。 その後現在に至るまで、
人様に悪戯をするカッパはいなくなりました。今でも奈良尾町の年配の方
は、山水を飲む時などに「奈良尾んもんぞ。ほし、ほし」とか「山んもん、
ほい」 と言ってカッパの悪戯から身を守るそうです。
※この話は、奈良尾町在住の江村清磨呂さん(八十九歳)が
祖父から聞いた話をまとめたものです。
現在の須崎地区で誓文石を現在見ることはでき
ません。
ずいぶん前になくなってしまったそうです。
それにもかかわらず、私たちの前にカッパたちが
現れないのは、増え過ぎた人間に嫌気がさしたのでしょうか。それとも、
住むべききれいな海や川が無くなってきたので山の奥に潜んでいるので
しょうか。 いずれにしても、少し寂しいような気がしますね。 余談なが
ら、長崎方面から延縄漁で来る漁師さんたちの中には、須崎地区のこと
を「誓文ケ浦」と言う人もいるそうです。