かとっぽ
天神様とカッパ Home
昔は、今の小学校や役場、天理教、農協、田坂病院付近までが田んぼ
であったそうだ。 その真ん中を釣道川が流れているが、今の小学校付
近の川向かいに当たる西天神側には天神様が祀られており、御神体は天
神様と水神様と男根形の道祖神様である。
この付近は、水の流れもゆるやかな所であったので、昔から昭和のは
じめ頃までは村の子供の遊び場となっていた。
昔の子供は、現代のように「プール」とか「海水浴場」といった施設
も無く、また、勉強する塾も無く、学校も午前中位で終わっていたので、
夏になると昼飯もそこそこに食って、この天神川に集まって泳いだり、
水をかけ合ったり、川の中央に小石を集めてウナギを獲るための塚を造
ったりした。また、川ガニや手長エビやハゼやアユなどを獲ったり、水
の中で相撲を取ったりしたそうだが、特に夏休みになると朝から夕方ま
で勉強もせずに遊んだそうである。 そのために、川に溺れたり怪我を
したり、時には水死したりする事故があったそれがカッパの仕業である
とされており、「天神川に泳ぎに行くなら御供(神様に供えた米飯)を
戴いて行けよ!」とか、「一日中遊ばんばってん、早く帰って勉強もせ
れよ!」とか、「天神川のカッパとは相撲は取いなよ!」とか、「カッ
パにジゴ(肛門)ば抜かるいなよ!」と、親は注意したそうだが、子供
は親の言う事を聞かないので、事故は何年も何十年も続いて発生したそ
うだ。 そこで、村人はこの地に天神様を建立することになったそうだ
が、この話を聞いた天神川のカッパは代表を送って、「人間様よ!子供
の事故は我々カッパのいたずらばかりではなかですよ。我々にとっても、
この天神川付近は釣道川の中間であるので、上流のカッパも下流のカッ
パも集まって遊ぶところであり、食糧となる川魚やカニやエビを獲ると
ころであることをわかって下されよ!」と頼んだそうだ。
これを聞いた村人は「カッパにも理屈があるな−。」と同情すると共
に、干ばつの時の雨乞いにはカッパの神通力も借らねばならないと思っ
て、「お前達をいじめようとも困らせようとも考えてはおらんのだよ!
ただ子供が遊んでばかりいて勉強ばせんけん、百姓の守り神と子供の守
り神を祀るだけじやけん心配すいなよ!」と言って建立したのが現在の
天神様であるとされている。 神話によるところの天神様は、天の神と
か地の神または、国土の神様とされており更に学問の神様となっている
ことからすれば百姓や子供との結びつきがある。
水神様は、前述したような神話からして「イザナミノミコト」の子神
「ミズハメノミコト」であり、この神様は「水をつかさどり火災をふせ
ぎ守る」とすることからすれば、水神様も人間とカッパとの結びつきが
ある。 道祖神は、昔から村の境界にあって、悪病が入るのを防いだり、
村人の旅の安全を守る神様とされていますが、地方によっては、昔、村
と村の境界が物々交換の市場となっていたために男女が集まることによ
って結婚の相手を見つけることが出来たので、縁結びの神とか子授けの
神として祀られているので御神体は男根形になっているそうだが、この
ような風習は日本では北陸地方に多く見られることからして長崎県内に
おいては希なる神様とされている。 青方郷田原の天神様は以上のよう
な故事によって建立されたものと思われるが、村人は毎年旧暦の二月と
五月には青方神社において祭事を行っている。
(青方の法村さんの話です。)
上五島町 民話 カッパ物語 より