かとっぽ
白水の親子カッパ Home
白水地区は、船崎郷から約七キロの所にあるが、昔から水が豊かであ
ったので稲作が行われていた。(この川は、今でも町の水道用水として
使われております。) 青方の村人は、昔から神様や仏様を大切にする
風習があったので、正月と盆には時別に格好のよい神芝(かみしば)や花
芝(はなしば)を供えていた。 ある日、村一番の働き者であった太吉は、
盆が近づいたので、「俺は今から神芝を取りに白水まで行ってくいけん
ね!」と家族に言って、朝四時頃起きて、山行き姿に鉈(なた)を持って
家を出た。 その日は今にも雨が降りそうな天気であったので、
「気をつけて行かんかなよ!」と、嫁のツネは朝飯の後始末をしながら、
声をかけて送ったそうだ。
午後になって、雨がボツボツ降り出した頃、太吉が帰って来たので、
「父ちゃん、しんどかったろ!お茶でも飲んで一服せんかなよ。」と言
って、嫁のツネが茶を出したが、太吉は返事もせず「囲炉裏」の中の焚
き火をじつと見つめているだけだった。
その晩、太吉はどうしたことか飯も食わずに寝てしまったが、夜中に
なると、高い熱が出たり手足をバタバタ動かしたり、時々ギェ!ギェ!
ギェ!と叫び出したので、「父ちゃん、どがんしたっかよ!具合が悪か
っか!」と大声をあげて尋ねても返事もせず、ただ、水を飲ませるとお
となしくなる日が三日三晩も続いたそうだ。 ところが、四日目になる
と、太吉の頭のボンノコの毛が逆立ち、目はギョロ、ギョロとなって、
まるで化け物のようになったのであった。 当時、村には医者は居なか
ったので、その晩親戚の者が集まり、どうしたものかと話し合いをした
ところ、「太吉は化け物からとりつかれているから、早う「祈とう師」
から見てもらおうや。」となって親戚の者が祈とうをしてもらつたとこ
ろ、「太吉はガーポからとりつかれている。それは、太吉が白水の川を
波る時、生まれたばかりのカッパの子供を踏み殺した上に、カッパが悲
しみのあまり山に入って山童(ヤマウロ)になって泣いていたところ、
更に太吉は山童が座っていた隣の神芝を切り取って持ち帰ったからであ
る。」ということであった。
そこで「どうすれば勘弁してもらえるか。」と尋ねると、「祝言島の
アワビ三個と、酒三合、米三合を持って来て白水の川のそばに供えよ!」
と言っているということであった。 これを聞いて親戚の者は、翌朝、
早くから祝言島のアワビを採りに行き、酒と米を揃えて、カッパが指定
した場所に供えながら、「人間の目にはお前達カッパの姿が見えんじゃ
つたのでやった事じやけん、勘弁してくれんかなよ!」と言ってあやま
ったそうである。 そして、使いの者が家に帰ってみると、不思議にも、
太吉は普段のように正気をとり戻して元気な姿になっていたそうだ。
この話は、カッパも人間と同じく子供を失えば悲しい親心がある物語
りとして、永く青方村の人々に語り継がれたということである。
青方の中村さんの話です
上五島町 民話 カッパ物語 より